2014年11月27日

保育園と近隣のトラブルについて

 先日、杉並区内で行われた民間団体主催の講演会に、私も足を運びました。「家庭に愛を」という演題で、講師ご自身の夫婦円満ぶりもジョークたっぷりに紹介されていました。講演後、質疑応答で「夫婦円満の秘訣は何か」との出席者の問に対し、講師は次のように回答されました。
 「実は、私ども夫婦には子供がおりません。ある時、妻の枕がぐっしょりと濡れていることに気が付きました。わけを尋ねると、近所の幼児育成施設から毎日聞こえてくる子供達の声を夜な夜な思い出すにつけ、切なさがこみあげてきて、涙が止まらないと言います。私はそれで初めて妻の心に思い至り、長年親しんだ住まいを変えました。まあ、そのようなことです。」
 と、冗談好きの講師もその時ばかりは言葉少なに訥々と回答されたのです。
 私も、区内のそうした私立施設にかかわる者として、身につまされる思いで拝聴しました。

 
 近隣から寄せられる、園児の声や保護者のマナーに関する苦情への対応は、幼稚園や保育園の仕事の中でも大きな比重を占めるものです。
 子供は国の宝、地域の宝。その地域に快く受け入れて頂くためには、近隣の理解をいかに得られるかが問われることとなるでしょう。
 待機児童を解消するために保育園を増やすことは基礎自治体の責務であって、間違ったこととは言えません。 
 重要なのは、どのような理念を備えた保育園をつくるかです。単に子供の量を預かる箱を増やそうといった理念なき発想では、園と地域の関係をめぐる諸問題は解決できません。
 杉並の閑静な住宅街を、行政需要の名のもとに、頭ごなしに破壊する暴挙と見なされるようなことがあれば、本末転倒というものです。近隣住民との間に要らざる争いの種をもたらすことにさえつながりかねないのではないでしょうか。
 保育施設の整備を進める当区もまた、こうした問題の当事者に他ならぬとの認識から、去る20日の杉並区議会第4回定例会本会議において一般質問を行いました(詳細は区議会HPをご参照下さい)。
 「保育園を整備する際、騒音対策等、近隣住民への説明はどのようになされているのか」との私の質問に対し、区の答弁は「適時適切に近隣住民への説明並びに意見聴取等を行い、地域の理解と協力を得て施設を整備運営できるよう努めているところだ」という内容でした。
 ところが、昨日行われた保健福祉委員会での区の報告によれば、私の一般質問に先立つ14日、すでに区内で進められていたさる保育園の建設が、近隣住民の理解を得られず、事業者が選定を辞退し区がこれを受理していたことが明らかになりました。

 子供は社会全体で育てるもの──そうした大号令のもと、近隣住民に無条件に協力を求め、我慢を強いることは果たして許されることなのか。
 真に地域に愛される園の在り方というものを、じっくり考えてみる必要があるでしょう。
 保育園増設をめぐる近隣とのトラブルは、子育て支援の名のもとに見過ごされてきた人々の「声なき声」が、やっと表に出てきた一つの現れではないのでしょうか。
 本来は子供は家で親が育てることが望ましいのであって、保育園はあくまで保育を必要とする児童のための福祉施設であるという大根本に、区は今一度立ち返る必要があるのではないでしょうか。
 ややもすれば、単に箱を増やしさえすれば良いという、安直な方向に流れてはいなかったか。

 
 私自身も、地域のお祭り参加や伝統行事の再興等を通し、地域に愛される幼児育成施設の在り方を模索しているところです。
posted by 田中ゆうたろう at 10:22| Comment(17) | 日記